事例報告(もし親権のない父が、親権者である母に無断で子供の転校手続きに来た場合)

 離婚後、親権を有している母Aのもとを離れ、父Bのもとで暮らすようになった中学生Cがいる。前夫Bは、元妻Aには扶養能力がない等、一方的にAを非難し学校や委員会に自分が親権者に代わってCを本市にて扶養するといい、本市中学校に転校を行いたいといってきた。そのときA、CともにD市に住民登録を有し学校も同市のE中学校に在籍していた。
ところがB、CがAに無断で本市に転入届を出し、E中学校へは転出を理由に転退学の手続きを行った。その後、本市の中学校に就学を希望してきた場合、どう対応すべきか。

■問題点
 E中学校は、転出を理由としてCを転退学させたが親権者であるAの了解なしに転退学させたことに問題はなかったのか。また、それを知りながらCを無条件で転校させることに問題はないのか。
  
□対 応
 親権者Aの了解をE中学校は取るべきではなかったか?本来、A、B、CをE中学校
に呼び寄せるなどしてきちんと将来のCの生活環境や学習環境について時間をかけて話し合わせるべきであると考えた。(このケースでは、AがCに対し育児放棄や暴力を行った事実はない)よって、E中学校の責任において転退学を取り消すべきであることを申し入れた。
実際は、この申し入れに対しE中学校長は、母Aは、仕事に追われCと十分に向き合う余裕がないとこぼすだけで結論を出せずにいる状態であったという。今回、学校の呼びかけにも応答がなく、放置すると不登校状態になる恐れがあるため仕方なく転退学を認めた。受け入れの可否は本市で行ってほしいとのことであった。
 そこで、本市が父Bに対して、親権者Aからの直接の依頼がなければ本市への転校は認めにくい。しかし、本市からE中学校に通学する(区域外就学)ことは可能であると説明。将来、本市での高校進学も考えるのであれば早急に親権者Aと話し合い、生活環境・学習環境の場をD市なのか本市なのかを決定するよう提案した。
 後日、3者で話し合いがもたれ、母BからCをAにゆだねたい旨の連絡を受け、本市中学校への転校を認めることとなった。
 
*今回は、父Bから親権を有しない旨の事前相談があったため上記の対応となったがどこにもそのことを言わなかった場合は通常の転校生として受け入れていたであろう。
そのため当初から親権の有無にかかわらず本市で受け入れるべきという意見もあった。ただ、そうすると受け入れ後、親権者からの申し出があれば再度、E中学校に戻される可能性がある。そうなるとCは父母の都合でD市と本市をいったりきたりしなければならないことになる。それは、Cに多大な負担となるだろう。