教育法務(就学義務違反)

就学義務違反に関する考察

近年、日本国籍を有する児童生徒であるにかかわらず学校教育法第1条で定められた学校への就学(いわゆる義務教育)をさせない保護者が増えている。具体的には、外国人学校フリースクール不登校は除く)、ホームスクール等である。

■基本的に押さえておかなければならない法令根拠等

日本国憲法第26条
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う」

教育基本法第4条
「国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。」

学校教育法第16条
「保護者は、次条に定めるところにより、子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う。」
(次条(17条)については、省略するが小学校に6年間・中学校に3年間就学させる義務を負う旨、規定されている。)

*上記の定めにより保護者には児童生徒に9年の義務教育を受けさせる義務がある。

学校教育法施行令第5条,6条
「市町村の教育委員会は、就学予定者で次に掲げる者について、その保護者に対し、翌学年の初めから2月前までに、小学校又は中学校の入学期日を通知しなければならない。」

「前条の規定は、次に掲げる者について準用する。この場合において、同条第1項中「翌学年の初めから2月前までに」とあるのは、「速やかに」と読み替えるものとする。
1.就学予定者で前条第1項に規定する通知の期限の翌日以後に当該市町村の教育委員会が作成した学齢簿に新たに記載されたもの又は学齢児童若しくは学齢生徒でその住所地の変更により当該学齢簿に新たに記載されたもの」

*また、上記の定めにより教育委員会は新たに入学する児童や転入等を行った児童に小中学校への就学を通知しなければならないとしている。
学校教育法施行令第19条
「小学校、中学校、中等教育学校及び特別支援学校の校長は、常に、その学校に在学する学齢児童又は学齢生徒の出席状況を明らかにしておかなければならない。」(出席簿の根拠でもある)

学校教育法施行令第20条
「・・・・(学校長は)引き続き7日間出席せず、その他その出席状況が良好でない場合において、その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知しなければならない」

学校教育法施行令第21条
「・・・・教育委員会は、前条(20条)の通知を受けたときその他当該市町村に住所を有する学齢児童又は学齢生徒の保護者が・・・・・義務を怠っていると認められるときは、その保護者に対して、学齢児童又は学齢生徒の出席を督促しなければならない」

*もし、通知に正当な理由なく通知に従わずに校区の小中学校に就学しない場合、教育委員会・学校長は出席の督促をしなければならない。

兵庫県の見解
教育委員会の督促にもかかわらず、保護者が児童・生徒を就学させない場合、保護者の就学義務不履行を検察庁に告発でき(刑事訴訟法第239条)この告発により検察官が家庭裁判所に提起し、保護者に対し10万円以下の罰金が科せられることになります」

学校教育法第144条
「第17条・・・・の義務の履行の督促を受け、なお履行しない者は、10万円以下の罰則に処する。」

*なおその督促にもかかわらず児童生徒を就学させなかった場合、保護者は告発され10万円以下の罰金が科せられる。

■実務上の問題点
 まず、根本的な問題は国県の法解釈では市町村に住所を有する児童生徒は当然、校区の学校に通っている=学籍がある(私立学校、国公立学校、特別支援学校は例外として校区外が認められる)という前提がある。しかし、実際にはその市町村に住所を有しかつ学校に入学・転校手続きを行って初めて校区の学校に就学となる。したがって、住所はあっても学籍がない児童生徒はありえるのだがそれが考慮されていない。その中には、不就学(義務教育を受けていない児童生徒)や就学義務違反者や学籍不明者(住所はあるが本人はどこにいるか不明)が存在している。また、以下の問題も依然としてある。

学校教育法施行令第20条
「・・・・引き続き7日間出席せず、その他その出席状況が良好でない場合において、その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知しなければならない」

→ 正当でない事由とはどんな場合かの明確な基準がなく各教育委員会の判断にゆだねられている。

学校教育法第144条
「第17条・・・・の義務の履行の督促を受け、なお履行しない者は、10万円以下の罰則に処する。」

→ 実際に適用された事例が皆無に等しく、死んだ条文となっている。また、仮に訴えて10万円以下の罰金を保護者に適用したところで学校と保護者との溝は余計に深まり根本的な解決にはならない。

学校教育法第16条
「保護者は、次条に定めるところにより、子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う。」
(次条(17条)については、省略するが小学校に6年間・中学校に3年間就学させる義務を負う旨、規定されている。)

→ 上記について、文部科学省は中学校の入学資格は、「小学校の課程を修了」したものと解釈しているが明文規定はない。就学義務違反の中学生は、小学校を卒業しなければ中学校に就学できないこととなる。(この場合、6年生から編入となる・・・関東では、厳格にこのように運用しているところがある)
以上、長くてわかりづらいものとなったが現時点でベターな手法ではないかと考える。