教育法務(校則について)

大阪府をはじめ学校での携帯電話の持ち込み禁止が新聞紙上でも話題となっている。

 橋下府知事は大阪府教育委員会を通じて市町村教育委員会に指示を出させるという行動にでている。また、それに対し文部科学省も支持を表明している。7月に文部科学省は、都道府県教育委員会に対し携帯電話の取り扱いに関する方針を明確化するよう通知を出している。また、同じく文部科学省通知「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月 初等中等教育局長通知)で「携帯電話を児童生徒が学校に持ち込み、授業中にメール等を行い、学校の教育活動全体に悪影響を及ぼすような場合、保護者と連携を図り、一時的にこれを預かり置くことは、教育上必要な措置として差し支えない」と示している。

■校則の法的根拠は?
 生徒指導を行うにあたっては、校則による規制が必要となる。では、学校が校則を定める法的根拠は何なのか。

→ 校則にはさまざまな形態(学校だけで定めたもの、生徒と話し合ったもの、PTAと話し合っ たもの等)があるらしく個別に吟味する必要があるが、一般論で言うと
 「校則は、「公の施設」の利用規則」ということになるらしい。
 「公の施設」とは、行政法学で営造物(エイゾウブツ)といい地方公共団体が設置する学校・ 図書館等々を総称する言葉である。
  今回の学校を例にとると「営造物管理者である校長は、法令に格別の規則がなくても、校則 を定め、生徒に校則に従うことを命じ、従わない場合は懲戒ができる」ことになる。
  つまり、教育法令には校則の制定権や校則違反の懲戒権についての定めはないが、この行政 法学でいう営造物理論により学校はそうしたことが行えることとされている。

部分社会論(昭和52年最高裁判決)
  大学当局と学生との関係を「大学は、国公立であると私立であるとを問わず・・・・その設 置目的を達成するために必要な諸事項については、法令に格別の規定がない場合でも、学則等 によりこれを規定し、実施することのできる自律的、包括的な権能を有し、一般市民社会とは 異なる特殊な部分社会を形成している・・・」と判事している。
  この判例をもとに大学にして制約が可能なら心身ともに未熟な小・中・高校ではいっそう制 約が可能と考えられる。

■規制の実効性は?
  携帯電話の規制、制服や髪形の規制がよく事例にあがってくる。法律論としては茶髪禁止は 定めることはできるが本当に禁止することが現実に可能なのか?過去の事例として生まれつき 茶髪の生徒の髪を無理やり黒に染めるとか強制的に丸刈りにするというのは行き過ぎた指導と なる可能性が高い。携帯電話も安全面を理由に保護者が積極的に持たせていることも多いだろ う。

  身だしなみの悪い生徒にそれを理由として登校させなかった場合、欠席扱いになるため内申 書に響いてくる。ただでさえ問題を抱えている生徒には進級・卒業を考えると保健室登校、別 室登校や時間外投稿といった配慮が必要かもしれない。

  携帯メールも授業中のみ学校が一時的に預かり下校時には返すといったことになるだろう。 しかし携帯メールは、インターネット人権侵害の問題もあることから単なる取り上げだけでな くインターネットのモラル、人権意識についての教育も大切になるだろう。携帯のフィルタリ ング(ネット使用制限機能)といった技術的な部分、保護者の協力も含め、総合的に対応して いかなければ実効性は保てない。
  最近は、携帯電話と小型パソコンとの境界がなくなってきている。頭の痛い話だ。