不景気の影がみえる

不況風 高校生襲う 親失業学費払えず 私立校 退学、バイト増加 滞納120人、総額1000万円超も
2008年12月28日 00:16 カテゴリー:社会
 親の失業や収入減で学費が払えなくなり、高校を退学・休学しなければならなくなる生徒が目立っている。学費のみならず生活自体に困り、やむなくアルバイトをする生徒も増えているという。本来ならば受験勉強に遊びにと、それぞれの夢をはぐくむ冬休みなのに、経済不況の寒風は10代の若者たちにも容赦ない。
 佐賀県のある私立高校では、学費が払えないことを理由にした退学が2学期の終わりまでに7人に達した。事務長は「年度末に進級をあきらめて退学する生徒はいたが、2学期に出るなんてこれまでなかった」と言う。
 この高校の本年度の滞納者は、全校生徒の15%にあたる120人ほど。数カ月にわたって滞納する家庭が増え、全体の滞納額は初めて1000万円を超えた。
 終業式が近づいた今月中旬。納入が3カ月滞っている2年生とその母親が相談に訪れた。県が誘致した企業で派遣社員として働いていた父親が、来年3月までの雇用契約を10月末で打ち切られたという。失業保険の手続きをしているが、支払われるのは3学期。母親は病気で働けない。
 事務長は、家計が急変した場合には学校と県による授業料免除制度があることを説明したが、免除を受けてもなお月1万円近い諸費用は必要だ。
 九州北部の別の私立高校でも11月以降、2人が休学した。1人は成績がクラスで一番だった。燃料費高騰に追い打ちをかけた経済不況が家業の運送会社に波及、学費滞納は20万円を超えた。休学中は学費を納めなくてよいため、進級できる出席日数をにらみつつ学費を工面し、復学の日を待ち望む。
 滞納者に対して、多くの学校は柔軟に対応している。この高校でも、本来は中間・期末テストは受けられないが、進級の道を残すために別室での受験を認めている。学費を納めた段階で単位を認める救済策だ。だがある教員は「家計の悪化が本格的に学費に及んでくるのは年明けだろう」と不安を募らせる。
 福岡県のある私立高校では、親の失業などでアルバイトをする生徒が増えている。生徒指導の担当教員は「バイトをさせてほしい、という申請が2学期に増えた。コンビニエンスストアファミリーレストランで働いて家計を支え、複数をかけ持ちする子もいる」と話す。授業料が要らない特待生でも、年明けに迫る修学旅行の費用が払えていない2年生もいる。
 経済の悪化は、卒業後の将来をも不透明にしている。10月以降、求人は途絶え、この教員が受け持つ実業系クラスでは29人のうち7人の進路が決まらない。
=2008/12/28付 西日本新聞朝刊=

*債権回収は、公平負担の面から避けては通れない。しかし、当たり前だが個々に状況をみながら対応しないと弱者いじめになってしまう。いまは、非正規社員の雇用問題がクローズアップされているが来年度からは正規社員のリストラや収入減が問題となるだろう。都道府県は、来年度予算で大変な収入減(おもに法人税)を見込んでいる。財政の良好な自治体は個人の収入減が影響する再来年度予算に影響がくるのかなと思っている。