定額給付金の事務は大変

給付金事務パンク、神戸市泣く 3月だけで申請37万件
 全国の政令指定都市でいち早く3月下旬から定額給付金の支給を始めた神戸市で、同月中に37万件超の申請が殺到するなどし事務がパンクしている。3月中に申請すれば4月には支給する予定だったが、かなりの数が5月下旬までずれ込む見通しだ。市民からは1日に数千件の問い合わせが相次いでいる。
 神戸市が支給のため特別に借りた神戸商工貿易センタービルの一室。広々としたフロアで派遣社員約200人が、市民から送られてきた申請書を封筒から出し、添付書類の確認や受け付け番号の割り振りをしている。だが、山積みの書類はなかなか減らない。
 神戸市では約71万世帯に3月19日から申請書を発送。定額給付金について矢田立郎市長は「景気対策になる」と高く評価。他自治体に比べ早くに準備作業に取りかかった。政令指定都市で最も早い同23日に受け付けを始め、同30日から口座振り込みの支給を始めた。「申請書が市に届いてから順調なら3週間で振り込む」と広報し、3月中に申請すれば4月中〜下旬には支給できるはずだった。
 しかし、1日1万通と見込んでいた申請が、3月23〜28日の最初の1週間(日曜を除く6日間)で約30万通届き、同月中には約37万6千通に達した。「市民の反応が予想以上に早く、処理が追いつかない」と担当者は疲れた表情を見せる。
 今月10日までに1万4千世帯に支給したが、3月に届いた分の残りの約36万通の事務は完了できていない。その後も申請書の送付は相次ぎ、今月10日時点で約50万通となっている。市では「4月中に約20万世帯に給付したい」としているが、既に届いた分の振り込みが終わるのは5月下旬以降にずれ込みそうだ。
 定額給付金支給のため設けた専用電話にはピーク時に1日6千件、いまも1日2千件の問い合わせがあり「振り込みはまだか」という質問が増えつつある。10日には市のホームページに支給に時間がかかっていることを知らせる文章を掲載する。
 このため市では13日には他部署から市職員50人の応援を受け、派遣社員も50人増員して対応する方針だ。
■各地で相次ぎトラブル
 定額給付金の支給を巡っては、各地でトラブルが相次いでいる。
 高松市では、給付に必要な添付書類の不備に頭を悩ませる。これまでに確認した申請書約4万5千通のうち、少なくとも約1万通の申請書に、給付金の振込先の「金融機関のキャッシュカードか通帳のコピー」が同封されていなかった。
 市総務課は「説明書が分かりにくかった」と平謝り。「振り込め詐欺」と間違われるため、「電話での市民への問い合わせは、やりたくてもできない」。通知書を送って必要コピーの郵送を求めているため、給付が遅れそうだという。
 兵庫県宝塚市では、申請書と一緒に送った説明文にうっかりミスがあった。申請には運転免許証やパスポートなどの「写し」が必要だが、説明文では「写し」の言葉が抜け落ちていた。実際、住民基本台帳カードや保険証など5件ほどの現物が送られてきて、市職員が謝罪しながら返却に回ったという。
 「1回目の給付は3月31日」とうたった鳥取市では、「まだ振り込まれていない」との苦情が殺到した。「早い人で31日に振り込める」との見込みだったが、市の予想以上に申請ペースが速く、実際に31日に振り込めたのは約1300世帯。4月9日までに申請済みの約1割、6400世帯にしか振り込めていないという。
 担当者は「給付日の目安は、丁寧に説明するべきだった」と反省する。


 朝日新聞10日付記事から