教員は大変な職業だ

新人先生、1年で300人以上が「退職」
[教育動向]

2008/12/18 15:00:00

公立学校に採用された先生のうち、1年を経て退職した先生が2007(平成19)年度、300人を超えたことが、文部科学省の調査でわかりました。これは、どういうことなのでしょうか。

まず、教員の採用の仕組みについて確認しておきましょう。そもそも地方公務員は、半年間の「条件附採用」を経て、改めて正式採用となります。これに対して、教員の場合は1年間の「初任者研修」を受けることが義務付けられているため、条件附採用期間も1年間に延長されています。採用試験に合格して実際に教壇に立ち、研修も受け、なおかつ教員に不向きだと判断されれば、1年後に正式採用とならないことも、制度上ありうるのです。
ただし、2001(平成13)年度までは正式採用とならなかった人の数は全国でも40〜50人前後にとどまり、採用者全体に占める割合も0.5%以下と、ごくわずかでした。それが2002(平成14)年度に100人を、2005(同17)年度には200人を超えました。さらに2006(平成18)年度は295人、2007(同19)年度は301人と増えています。

これには最近、新規採用者数自体が増えている、ということも、もちろんあります。しかし、採用者全体に占める割合を見ても、2007(平成19)年度は1.4%に上っており、72人に一人が正式採用されなかった計算になります。やはり、正式採用にならない教員は増える傾向にあることは確かなようです。ということは、採用試験の段階で、教員に不向きな人を見抜けなくなった、ということなのでしょうか。
実はそれよりも、教員の質に対する世間の厳しい目を反映して、制度の運用自体が厳しくなっている、という側面のほうが強いようです。教員免許更新制の導入を提言した2006(平成18)年7月の中央教育審議会答申は、「条件附採用期間制度の厳格な運用」を求めていました。2005(平成17)年度の急増も、2004(同16)年10月に当時の中山成彬文部科学相中教審に免許更新制を審議するように諮問していたことを考えれば、納得がいきます。さらにさかのぼれば、免許更新制は2000(平成12)年12月の教育改革国民会議の提言を受けて、いったん中教審で審議されながら、2002(同14)年2月の答申で見送りになった経緯があったのですが、その答申の中でも、見送りの代わりに条件附採用制度の厳格な運用を強調していたのです。

もちろん、子どものことを考えれば、教員に向かない先生にいつまでも教壇に立っていられては困ります。しかし、教員免許を持っているからといって、すぐにベテランの先生と同じように教えられるわけでもないことも、忘れてはいけません。資質の問題は教育委員会に専門的かつ慎重に判断してもらうとして、まずは新人の先生を学校でどうやって支え、育てていくかを考えることが第一でしょう。それは学校のみならず、保護者の関心事ともなるべきなのではないでしょうか。

コメント>教員はつくづく大変な職業だ。免許取得のための苦労、正式採用のための苦労、昇任のための苦労、免許更新の苦労。これまで以上に、地域・保護者・行政は先生を手助けしなければならないと思う。